ドル円(USD/JPY)は人気の高い通貨ペアの1つです。
情報を集めやすく、大きく値動きするケースは少ないため、初心者向けの通貨ペアとも言えるでしょう。
しかしたった1日で、8円以上も急落した過去があります。
なぜそのようなことが起きたのでしょうか。
また、今後のドル円はどのような値動きを見せるでしょうか。
この記事ではドル円の特徴や相場について、プロトレーダーのひろぴーが解説します。
目次
ドル円(USD/JPY)の特徴
はじめにドル円の特徴を2つご紹介します。
①流動性が高い
国際決済銀行(Bank for International Settlements)の情報から、2019年に世界で取引された通貨の割合は下記の通りです。
通貨 | 割合 |
---|---|
米ドル | 88% |
ユーロ | 32% |
日本円 | 17% |
イギリスポンド | 13% |
オーストラリアドル | 7% |
カナダドル | 5% |
スイスフラン | 5% |
トルコリラ | 1% |
ニュージーランドドル | 1% |
比較してみると、ドル円は他の通貨ペアと比べ、流動性が高いと分かるでしょう。
②リスクオフ通貨である
ドルは世界の基軸通貨であり、様々な場面で取引できます。
例えば資源国の通貨や高金利の通貨を取引する場合も、ドルを使用するケースが多いのです。
しかし資源国や新興国でテロや金融危機が起これば、リスクを避けるために資産はドルに戻されます。
そして日本円も同様に、リスク回避の目的で買われることが多いのです。
日本円は金利が低くリターンを期待できませんが、安全資産という共通認識があります。
このようにドルと円は、リスクオフ通貨とみなされているのです。
アメリカと日本の概要
アメリカ合衆国は50の州・連邦区で成り立つ国です。
世界最大の経済大国であり、軍事国家でもあります。また2019年における名目GDPは世界1位です。
そして米ドルは基軸通貨であり、世界中で使用されています。
第二次世界大戦前は、イギリスポンド(GBP)が基軸通貨でした。
しかし戦後のアメリカには国力があり、イギリス以上の工業国となりドルが基軸通貨になりました。
戦後は金本位制で、アメリカがイギリス以上の金を保有していたという背景もあり、ドルが基軸通貨となりました。
一方で日本は、アジア圏に位置する島国です。
第二次世界大戦敗戦後、高度経済成長・バブル崩壊を経て、2019年の名目GDPはアメリカ・中国に続いて世界3位となりました。
日本円はドルと比べて世界での取引割合は高くありません。
しかし日本円は安全通貨と認識され、多くの人に利用されているのです。
ドル円(USD/JPY)のスワップポイント傾向
ドル円のスワップポイントは、新興国通貨ペアと比べると高くありません。
FX会社のドル円のスワップポイントは、下記の通りです。
プラススワップ | マイナススワップ | |
---|---|---|
外為どっとコム | 7 | -32 |
FXプライムbyGMO | 2 | -17 |
みんなのFX | 2 | -4 |
出典:外為どっとこむ
みんなのFX
FXプライムbyGMO
※2020年12月21日時点での各社のスワップポイントです
両国の政策金利
日本とアメリカの政策金利は、下記の通りです。
2020年/月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日本 | -0.1% | |||||||||||
アメリカ | 1.75% | 0.25% |
日本は2016年1月からマイナス金利であり、アメリカは2020年3月から金利を1.75%から0.25%に引き下げました。
その目的は、新型コロナウイルスにより滞った経済を活発化させるためです。
このように日本とアメリカの金利には、大きな差がないのが分かります。
ドル円(USD/JPY)の過去の相場
それでは過去のドル円の値動きを見ていきましょう。
1日で大きく値動きしたイベントについて解説します。
日時 | イベント内容 | 1日の急落値幅 |
---|---|---|
2008年10月24日・28日 | リーマンショック | 24日:約7.3円下落 28日:約5.9円上昇 |
2010年5月 | NYダウのフラッシュクラッシュ | 約6.2円下落 |
2015年8月 | チャイナショック | 約5円下落 |
2016年6月24日 | イギリスのブレグジット | 約8.5円下落 |
まずは2008年に起きた「リーマンショック」です。
ドル円は24日に約7.3円下がり、その反動で28日には約5.9円上がりました。
次に2010年5月に起きた、「NYダウのフラッシュクラッシュ」です。
フラッシュクラッシュは株式指数の先物取引で、人為的に多くの売り注文が出されたことで発生しました。
株式市場だけではなく為替にも大きな影響を与え、1日で約6.2円下落しています。
そして2015年8月には、中国の株式市場が大きく下落する「チャイナショック」が起きました。
チャイナショックはアメリカにも影響し、リスクオフとして円が買われた結果、1日で約5円下落したのです。
最後にご紹介するのは、イギリスのブレグジットです。
2016年6月23日、イギリスの国民投票の結果、EU離脱派が過半数を獲得しました。
この投票結果を受けてイギリスポンドは下落し、ユーロやドルにもダメージが及びます。
その結果ドル円は1日で約8.5円と大幅に下がりました。
【検証】ドル円の月別のアノマリーと実際の騰落率
前提として、ドル高や円安になるドル円は上昇しやすく、逆にドル安や円高になるとドル円は下落しやすくなります。
有名なアノマリーに、2・5・8・11月はアメリカ国債の利払いがあります。
投資家は受け取ったドルを自国通貨に替えるため、ドル安・円高になり、ドル円は低迷しやすくなります。
3月は日本企業の決算です。
利益を確定させるために円に戻すことで、円高になります。
また4月は決算が済み、再び円を海外の投資に回すため円安になります。
12月はアメリカ企業の決算であるため円安になり、1月は円高になる傾向があります。
このように各月ごとに円高・円安になる特徴がありますが、必ずしも特徴通りの値動きにはならない点にご注意ください。
ドル円の各月の騰落率
実際に2000年1月から2021年11月までの月足データから、ドル円の各月の騰落率の平均を算出しました。
過去20年において上昇しやすかった月と、逆に下落しやすかった月が分かります。
月 | 平均騰落率 |
---|---|
1 | 0.3% |
2 | 0.7% |
3 | -0.2% |
4 | -0.1% |
5 | -0.1% |
6 | -0.5% |
7 | -0.9% |
8 | 0.2% |
9 | -0.0% |
10 | 0.9% |
11 | 0.3% |
12 | -0.5% |
必ずしも上記で紹介したアノマリー通りには、騰落していませんでした。
しかしドル円は、春から夏にかけて下落しやすいことがわかり、興味深い結果となりました。
今後ドル円に影響をもたらす事柄
2020年は新型コロナウイルスの影響で、日本円だけではなくスイスフランや金(ゴールド)といった安全資産が買われ、ドルを含めたそれ以外の通貨は売られる様子が見られました。
2021年も新型コロナウイルスによる感染者・死者数が増えるようであれば、ドル円の買戻しにはなりにくいでしょう。
一方でワクチンの開発が進めば、経済は再び活発化し、失業者の減少・アメリカ政策金利の引き上げなどにより、ドル買いが進むと考えられます。
しばらくの間は、新型コロナウイルスとワクチン関連のニュースをメインに情報収集を続けるのが良さそうです。